メディフォードでは国立研究開発法人国立がん研究センターで樹立された
臨床分離株(PDC:Patient-Derived Cell)を用いた各種受託サービスをご提供しています。

2024年7月25日に開催された第55回日本膵臓学会大会のワークショップ1「膵検体を活かす未来プロジェクト」において、国立がん研究センター研究所 佐々木博己先生が「世界最大数の膵臓がん細胞株の樹立その性質、利活用、及び将来性について」講演されました。
先生のご発表の中で、当社のPDCを用いた創薬支援サービスをご紹介いただきました。

About PDCPDCについて

PDCとは

国立がん研究センターが樹立したPDCは、胃がん、膵がんの腹膜播種により腹水が貯留した患者さんの腹水に含まれる細胞から樹立した細胞株です。低継代数で保存しており、腫瘍細胞を含む不均一な細胞集団を維持しています。培養細胞株よりも患者さんのがん組織中のがん細胞に近い状態を維持していることから、抗がん剤の薬効の確認に有用です。

PDCとは

PDCの特徴

  • 患者から採取したがん細胞を3回または5回継代し,株化したもの
  • 100継代前後まで使用予定
  • 全エクソーム解析,マイクロアレイ(Affymetrix U133 Plus 2.0)を実施
  • 当社と国立がん研究センターで,in vitro(2D培養)での薬効評価を実施
    ( シスプラチン, ドセタキセル,ゲムシタビン等を使用)

胃がん患者の腹水由来PDC:45株

スキルス胃がんに代表される予後不良のびまん型胃がんの細胞株

参考論文:
Tanaka Y, Chiwaki F, .., Sasaki H, Mano H. Multi-omic profiling of peritoneal metastasis in gastric cancer identifies molecular subtypes and therapeutic vulnerabilities. Nat. Cancer. 2021 Aug. doi.org/10.1038/s43018-021-00240-6. Komatsu M, .., Sasaki H. ARHGAP–RhoA signaling provokes homotypic adhesion-triggered cell death of metastasized diffuse-type gastric cancer. Oncogene. 2022 Sept 20. doi.org/10.1038/s41388-022-02469-6.

膵臓がん患者の腹水由来PDC:38株

腺がん36株、扁平上皮がん1株、腺扁平上皮がん1株

参考文献:
佐々木博己編著「患者由来がんモデルを用いたがん研究実践ガイド」、羊土社、2019.

Commissioned business試験・サービスの詳細

PDCを用いたin vitro試験(2次元培養法)

胃がんPDCや膵がんPDCを用いて、以前より実施されている2次元培養法によりin vitroでの抗腫瘍効果を確認致します。
試験例)膵がんPDC23株に対する、ドセタキセル、シスプラチン、ゲムシタビンの効果を確認しました。

試験例

膵がんPDC23株に対する、ドセタキセル、シスプラチン、ゲムシタビンの効果を確認しました。

①膵がんPDC23株と膵がん培養細胞株に対するドセタキセルの効果
②膵がんPDC23株と膵がん培養細胞株に対するシスプラチンの効果
③膵がんPDC23株と膵がん培養細胞株に対するゲムシタビンの効果

結論

以上①~③の試験例で、膵がんPDC23株のドセタキセル、シスプラチン、ゲムシタビンに対する感受性に違いが見られ、膵がんPDC23株はパネルテストとして有用であることがわかりました。

実験の詳細はこちら

PDCを用いたin vitro試験(3次元培養法)

弊社では、3次元培養法を開発しました(国際特許出願中(WO2018/169007)、一部登録済み)
この技術を用いて膵がん、胃がんのPDCを3次元培養して、抗がん剤の抗腫瘍効果の確認が可能です。

実験例

胃がんPDC2種(NSC-11C, NSC-22C)を3次元培養し、抗がん剤(ドセタキセル・シスプラチン)の効果を確認しました。

ドセタキセルの効果

平均値±標準偏差(n=3)

シスプラチンの効果

平均値±標準偏差(n=3)

IC50付近の抗がん剤の濃度とコントロールのスフェロイドの大きさの比較
コントロール ドセタキセル 62.5 pM *1 シスプラチン 1.56 μM *2
NSC-11C
NSC-22C

スケールバー: 500 μm

*1: 2次元培養法のIC50付近のドセタキセルの濃度
*2: 3次元培養法のIC50付近のシスプラチンの濃度

結論

3次元培養では胃がんPDCに対する抗がん剤の効果に違いがみられる。

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PDCを用いたin vivo試験

胃がんPDCあるいは膵がんPDCを免疫不全マウスの皮下に移植し、増殖させた腫瘍に対する各種薬剤の抗腫瘍効果をin vivoにて確認が可能です。

試験例①

胃がんPDC2種(NSC-10C, NSC-14C)に対する、シスプラチン、ドセタキセル、カペシタビンの腫瘍縮小効果を確認した。

胃がんPDC (NSC-10C, NSC-14C)を免疫不全マウスの皮下に移植して作成された腫瘍の病理像
HE CXCR4 CD44
NSC-10C
NSC-14C

スケールバー: 200 μm

CXCR4:がんの転移に関与する分子
CD44:がん幹細胞の主要な細胞表面マーカーの一つ

抗腫瘍試験の結果
NSC-10C
NSC-14C
結論

PDCごとに抗がん剤に対する感受性は異なり、PDXと同様にPDCも患者のアバターとして利用可能と考えられる。

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試験例②

膵がんPDC2種(NPC-7C, NPC-20C)に対する、ゲムシタビンの腫瘍縮小効果を確認した。

膵がんPDC (NPC-7C, NPC20-C)を免疫不全マウスの皮下に移植して作成された腫瘍の病理像
HE CXCR4 CD44
NPC-7C
NPC-20C

スケールバー: 200 μm

CXCR4:がんの転移に関与する分子
CD44:がん幹細胞の主要な細胞表面マーカーの一つ

抗腫瘍試験の結果
NPC-7C
NPC-20C
結論

PDCごとに抗がん剤に対する感受性は異なり、PDXと同様にPDCも患者のアバターとして利用可能と考えられる。

実験の詳細はこちら

試験期間について

標準的な試験期間

in vitro(2次元培養法)
約4か月
in vitro(3次元培養法)
約4か月
in vivo
約6か月