PBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cells:末梢血単核球)は、血液中の大部分を占める赤血球や顆粒球、血漿が除かれ、T細胞、B細胞、NK細胞、単球及び樹状細胞等の多様な免疫細胞が濃縮されているのが特徴です。抗原特異的T細胞等の希少な細胞の評価に適しており、凍結による長期保存も可能です。これらの特徴から、近年、免疫研究やワクチン開発など様々な用途に用いられ、注目を集めています。
PBMCは一般的に密度勾配遠心法を用いて新鮮な血液から単離・回収されますが、比重液上への血液の重層作業や、分離したPBMCの回収・洗浄作業は用手で行われ、高品質で均質なPBMCを得るためには習熟した操作技術が求められます。また、より生体内の状態を反映したPBMCを得るためには、血液採取からPBMC回収までをできるだけ短時間で実施する運用体制が必要となります。こうした点はPBMCを用いた研究で正しい分析結果を得るために非常に重要です。
メディフォードでは長年にわたり、治験・臨床研究等におけるPBMC分離を受託しています。医療施設等より血液検体を回収し、東京都板橋区にあるGLPラボにおいて、熟練した研究員がPBMC分離を実施します。標準的な分離法の他、Vacutainer CPT採血管 [BD社製]、Leucosep tube [Greiner社製]、SepMate [STEMCELL Technologies社製] などの製品を用いた分離法でも対応可能です。分離したPBMC検体は当社でFlow CytometryやELISPOT、qPCRなどの分析に用いる他、将来の研究のための長期保管(-80℃、-150℃、液体窒素下)も承ります。
以下にPBMCを用いた分析サービスの一例をご紹介します。
サイトメトリーによる細胞表面抗原及び細胞内抗原の測定などを受託しています。
蛍光標識抗体を用いたフローサイトメトリー(flow cytometry:FCM)では8カラーまたは12カラーまでのパラメーター測定に対応しており、各サブセット解析、免疫細胞フェノタイピング、薬剤刺激応答性解析などが実施可能です。
また、マスサイトメトリーでは金属安定同位体標識された抗体を用いることにより、検出試薬同士が干渉しにくいという特徴から、1つのサンプルで40項目以上のパラメーター測定が可能です。取得データはFlowJo解析用ソフトウェア(BD社製)を用いた多変量解析(t-SNE、FlowSOM)も対応可能ですのでご相談ください。
抗原発現の特徴が近い細胞がクラスターを形成するため、どの様な細胞集団が存在するか可視化し、複雑な高次元情報の把握を容易にします。こちらの例ではCD3発現をヒートマップ表示することにより、主要なT細胞の2集団とその他3集団が存在することが把握できます。
ELISpot(Enzyme-Linked ImmunoSpot)とは、単一細胞レベルで分泌されたサイトカインを検出できる非常に高感度なイムノアッセイ法です。
細胞から分泌されたサイトカインは培養プレート内ウェル底面膜の抗体に補足され、その後、二次抗体や酵素などと反応し、ウェル底面膜の細胞が位置していた場所にサイトカインスポットを形成します。このスポットをカウントすることで、サイトカイン産生細胞を可視化、測定します。細胞から産生されたサイトカインが、放出後すぐに抗体と結合するため、分解や細胞への取り込みといった影響を受けない特徴があります。
特定の免疫応答で見られるような少数の活性化細胞を研究する際などに有用で、感染症ワクチン、がんワクチン、細胞医薬品開発などでの有効性確認試験などにおいて実績が豊富です。
患者由来のPBMCから分泌されるサイトカインやケモカインといったバイオマーカーをイムノアッセイ法で測定することで免疫応答性評価を行います。また、分離したPBMCを薬剤やペプチド等で刺激培養した上清中のバイオマーカーを測定することで刺激応答性の評価が可能です。
バイオマーカーの測定には一般的なELISA法による単項目測定はもちろんのこと、Meso Scale Diagnostics(MSD)社のマルチアレイシステムやBio-Rad社のBioPlexサスペンションビーズアレイシステムといった多項目同時測定も有効です。